障害分野NGO連絡会(JANNET)の研究会で伺ったベトナムの事例と国際的な動き、相当興味深いものでした。
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http://wbuap.exblog.jp/23558732/
発表された方の団体では、何カ国かの途上国でインクルーシブな防災のプロジェクトを進めています。
その中でも、ベトナムが好事例として挙げられました。
ベトナム中部の農村は毎年、洪水の被害に見舞われます。
大雨で耐えられなくなって水力発電用のダムから大量に放水するのが原因というから、自然災害と言い切れない気がしますが・・・
そんなところに、プロジェクトは入っていきました。
対象は、47の村。
最初は、避難用のボートが欲しいと言ってきたそうです。
みんな、腰まで水が来ると、慌ててボートで避難するのが通例だったとか。
いやいや、それでは避難は遅すぎますって。
ましてダムの放水がきっかけなのであれば、警報も出せる筈だし、もっと早く避難できる筈だし、もっと早く避難しないと逃げられない人も出てくるでしょう。
まず、障害のある人に、日本でいうハザードマップのようなものを作ってもらいました。
それも、障害のある人たちの家やニーズも一緒に併せて、参加者への合理的配慮も可能な限り実施して。
例えば・・・
・○○さんは耳が聞こえないから、誰かがドアをノックしてあげないと警報が伝わらない
・□□さんは目が見えないから、誰かが避難の時に一緒に行く必要がある
・あそこの家はシングルマザーと小さい子どもたちで暮らしているから、避難するには更に手が必要
そして、こうしたニーズの中で、障害のある人が出来ることを考えてもらいました。
例えば・・・
・僕は声が大きいから警報代わりに皆に知らせることができる!
・私は歩くことは出来るから、耳の不自由な人の家をノックしに行ける!
併せて、プレゼンの仕方等の研修も受けます。
何処の国でも、障害のある人は、エンパワーメント前だと中々人前で話したりニーズを訴えたり仕事に手を挙げたりすることが出来ません。
自分は役に立たない、と考えてしまうことが多いですよね。
その後、村全体の防災計画作りの会合が開かれます。
その場で、障害のある人たちもプレゼンをするのです。
村の人たちにニーズが伝わるだけではなくて、障害のある人に対する意識が劇的に変わるそうです。
こうしてプロジェクトがスムーズに進んだのには幾つか理由があるとのことでした。
例えば・・・
・ベトナム政府が既に全国レベルで防災の取組をやろうと考え、予算も少し組んでいた
・ベトナム戦争の経験から、自分たちで身を守る意識があり、外国の人が来てくれるんだから自分たちも何とかしなければ、と意識が高くなっていった。
ベトナム戦争を闘ったベトナムと米国が、「自分たちの身は自分たちで守る」という意識が強い点で一致しているというのは、因果な話だと思いました。
こうした取組が他の国でも可能になるには、各国が防災に積極的になってもらわなければなりません。
そのためにも、世界防災会議で採択される新たな世界的防災枠組みが重要になって来る、ということでした。
枠組みの素案では、「障害」が4~5箇所、記載されています。
また、これまでは政府だけが防災の担い手だったのを、社会全体をステークホルダーと見なすよう方向転換が図られています。
以前、インドネシアに津波の警報の代わりに浮の設置を援助したところ、政府は知っていても地域住民が知らなかったので、漁師が浮を持ち帰ってしまった、という例が披露されました。
社会皆が高い意識を持つのは、本当に大切なことなんだと、再認識させられる事例でした。
ベトナムの例からも、政府が防災に積極的であれば、インクルーシブな防災を持ち込むことは可能性が高くなります。
そして、世界防災会議で枠組みが採択されれば、各国はそれなりの努力をしなければならないでしょう。
だからこそ、WBUとして、各国の視覚障害団体に、防災の話し合いや取組みにしっかり参加できるような支援をしなければならないと思っています。